仏教用語の基礎知識

内証(内緒)

 童謡に「ないしょ ないしょ ないしょのはなしは あのねのね」とあります。口ずさむだけで、メロディが頭に思い浮かぶのではないでしょうか。
 秘密の話などのことを、「ないしょ(内緒)」といいますが、元々は仏教の言葉「ないしょう(内証)」が語源であるといわれています。
 数あるお経の中に、『入楞伽経(にゅうりょうがきょう)』という経典があります。その中で、「自内証法門」という言葉でしばしば説かれます。その意味するところは、自らの心の内の悟りの状態ことです。悟りは、言葉では言い表せないことで、当の本人のみ窺い知ることのできた様子であり、他の人に説明しようにも、人から理解してもらうことも不可能なことなので、秘密の法とされてきました。そこから、自内証法門を略した「内証」が、秘密を意味する言葉になり、おもてむきでない、内密の、という意味で使われるようになりました。
 江戸時代には、奥まった場所、暮らし向き、金まわり、個人的な都合、妻など、その意味する範囲が多岐にわたりました。例えば、忠臣蔵のなかで、吉良上野介のセリフとして「赤穂藩浅野家は、おもてむき五万三千石であるが、塩田を持っているので、内証は至って裕福と聞いておる。それ相応の礼儀には欠くことはあるまい。云々」と心付けを期待した言葉を側の者に語る場面がありますが、この場合の内証は藩の財政の意味になります。
 他の例としては、江戸時代、公でない場所を「奥」といい、江戸城では大奥、家庭は奥といわれていたことは、よくご存知のことでしょう。そこで生活している人のことを奥さんと呼びました。この奥の別名が内証で、家庭のことは、外でべらべらと喋ることではない、つまり言わない事柄から内証となりました。
 現代では、「人に言えない、内密の」という意味のみが残っています(内緒・内所は後年の当て字)。冒頭の童謡はその意味で使われています。
 仏教では、内証の反対の言葉は、「外用(げゆう)」といいます。これは、仏さまからのはたらきかけのことです。よりどころとなる智慧、慈悲を意味し、内証外用は対の言葉として用いられてきました。

合掌